世界保健機構(WHO)は、“Bacterial Priority Pathogen List (BPPL) 2024”薬剤耐性をもつ危険な細菌のリストを更新しました。https://www.who.int/publications/i/item/9789240093461
このリストは、現在問題となっている抗菌薬耐性菌(AMR)の蔓延を阻止するために必要な新しい治療法の開発に関する指針を提供するための重要なツールとなります。リストには15種類の菌が挙げられ、Critical, High, Mediumの3つのカテゴリーに分けられています。2017年からの改訂となります。

Critical Priority
- Acinetobacter baumanii:カルバペネム耐性
- Enterobacterale(腸内細菌目細菌):第三世代セファロスポリン耐性、カルバペネム耐性
- Mycobacterium tuberculosis (結核菌):リファンピシン耐性
このカテゴリーの菌は、限られた治療選択肢や高い疾病負担(死亡率および罹患率)であり、増加傾向にあり公衆衛生的に脅威をもたらす耐性菌とされています。
日本ではJANISのデータ(2022年入院検体)によると、第三世代セファロスポリン耐性大腸菌は32.35%と高いものの、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌は7.00%、カルバペネム耐性アシネトバクターは1.9%となっています。
High Priority
- Salmonella Typhi: フルオロキノロン耐性
- Shigella spp.: フルオロキノロン耐性
- Enterococcus faecium:バンコマイシン耐性
- Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌):カルバペネム耐性
- Non-typhoidal Slmonella:フルオロキノロン耐性
- Neisseria gonorrhoeae(淋菌):第三世代セファロスポリン耐性、フルオロキノロン耐性
- Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌):メチシリン耐性
このカテゴリーの菌は、Criticalの菌と同様に重要ですが、特に一部の集団や特定の地域にとって重要な病原体です。サルモネラや赤痢菌は、緑膿菌や黄色ブドウ球菌と共に低・中所得国において大きな問題となっています。
国内でVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)は、感染症法にて5類感染症に分類されており、 全数把握対象疾患となっています。2021年は、全国17都道府県より124名の報告がありましたが、症例数上位は大阪府(25例)、広島県(21例)、静岡県(17例)と地域差があリます。
Medium Priority
- Group A streptococci:マクロライド耐性
- Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌):マクロライド耐性
- Haemophilus influenza:アンピシリン耐性
- Group B streptococci:ペニシリン耐性
日本ではすでにGASのマクロライド耐性は30%ほどになっていますし、肺炎球菌に至ってはマクロライド耐性が84.8%と深刻な状況です(いずれもJANIS2022年入院検体)。また日本国内でGBSのペニシリン耐性が5.8%と増加傾向にあるのは気になるところです。近年ペニシリン結合タンパクの変異(PBP2X)の変異によるペニシリン低感受性GBSが報告されており注目が集まっています。
2017年のBPPLとの変化

BPPL2024ではBPPL2017に含まれていた5つの病原体と抗菌薬の組み合わせが削除され、新たに4つの組み合わせが追加されました。第三世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌がHigh priorityに含まれたことは、特に低・中所得国への介入の必要性を強調しています。カルバペネム耐性緑膿菌が、CriticalからHighへ移行したことは、世界的な耐性減少のトレンドを反映しています。
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