尿路感染症におけるウレアーゼ産生菌

感染症

尿路感染症において下記のような病態を合併する際には原因微生物としてウレアーゼ産生菌を考慮しましょう。

  • 高アンモニア血症を伴う意識障害
  • アルカリ尿
  • 尿沈渣にてリン酸アンモニウムマグネシウム結石

代表的なウレアーゼ産生菌

尿路感染症で報告されている主なウレアーゼ産生菌

Proteus spp. (P. mirabilis, P vulgarisなど):最多!

Klebsiella spp. (K. pneumoniae, K. oxytocaなど)

Morganella morganii

Providencia spp. (P. rettgeriなど)

Corynebacterium urealyticum

など

その他ウレアーゼ産生菌

Ureaplasma urealyticum

Nocardia spp.

Helicobacter pylori

Cryptococcus spp.

Nocardia spp.

など

高アンモニア血症を伴う意識障害

ウレアーゼは尿素を分解して二酸化炭素とアンモニアを産生する酵素です。

(NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2

体内の窒素の約80%が尿素として尿に排泄されます。ウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症の発症頻度やメカニズムについては明らかとなっていませんが、ウレアーゼ産生菌により尿素が分解され、尿中で生成されたアンモニアが膀胱静脈叢から吸収されて、直接体循環へ移行することにより起きると考えられています。尿閉はこの病態を助長するものと推測され、高アンモニア血症による意識障害がみられる症例のほとんどで尿閉がみられます。

アルカリ尿

一般的には尿のpH>7.4でアルカリ尿と言われ、そのような場合ウレアーゼを産生する微生物の存在を疑います。ウレアーゼ産生菌により尿素はアンモニアに分解され、アンモニアは水素イオンと結合してアンモニウムを形成してアルカリ性になります。

NH3+H+ ⇄ NH4+

リン酸アンモニウムマグネシウム結石

尿路結石の元となるのは、カルシウム、マグネシウム、シュウ酸、尿酸、リン酸などの物質です。これらの物質が尿中で飽和状態となると結晶化し、その結晶が凝集して結石となると考えられています。

リン酸マグネシウムアンモニウム結石(struvite)は、ウレアーゼ産生菌の存在によりアンモニアが生成され、尿中pHがアルカリに傾くことによって形成されます。

Mg2++NH4++PO43- ⇄ MgNH4PO4・6H2O(リン酸アンモニウムマグネシウム)

この結石は、男性よりも女性に多くみられます。

一旦この結石ができると、結石の存在により細菌が増殖し、ますます結石が増大するという悪循環が起こり、サンゴ状結石となることもあります。

参考文献

Nat Clin Pract Urol 2007; 4: 455-8. (PMID: 17673917)

J Med Microbiol 2009; 58: 1367-75. (PMID: 19556373)

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