ポイント
- WHO事務局長のテドロス博士が、コンゴ民主共和国(DRC)とアフリカの複数国でのエムポックスの急増を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」と宣言しました。 https://www.who.int/news/item/14-08-2024-who-director-general-declares-mpox-outbreak-a-public-health-emergency-of-international-concern
- 新しいクレード(系統)のエムポックスが出現し、DRC東部で急速に拡大していることが懸念されています。
- 2年間で2度目のエムポックスに関するPHEIC宣言となります。
Mpoxの背景情報
Mpoxは、モンキーポックスウイルス(別名:エムポックスウイルス)感染による急性発疹性疾患です。Mpoxは1970年にDRCで初めて人間から検出されました。 中央アフリカと西アフリカの国々で風土病とされています。 2022年7月に多国間でのアウトブレイクがPHEICとして宣言され、2023年5月に終息宣言されました。
潜伏期間は通常6~13日(5~21日)とされます。症状は発熱と発疹を主体として、多くは2~4週間で自然に回復しますが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もあります。また、一般に皮膚病変が治癒し、落屑するまでの間が他者への感染性がある期間とされます。
エムポックスの現在の流行状況
- DRCでの感染拡大:
- 過去10年以上にわたり報告されてきましたが、昨年から件数が大幅に増加。
- 2024年は既に昨年の総数を超え、15,600件以上の症例と537件の死亡が報告されています。
2. 新しいウイルス株(クレード1b)の出現:
- 主に性的接触を通じて拡散していると考えられています。
- DRCの近隣4カ国(ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダ)で100件以上の確定症例が報告されています。
3. 複数のクレードによる異なる感染経路:
- 異なる国で異なるクレードのMpoxのアウトブレイクが発生しています。
- 感染経路やリスクレベルも多様です。
WHOの対応
- ワクチン:
- 現在使用されている2種類のワクチンがWHOの戦略的諮問委員会によって推奨されています。
- 緊急使用リストプロセスを開始し、低所得国でのワクチンアクセスを加速させる予定です。
- 資金:
- 初期対応として1500万米ドルの資金が必要と予想されています。
- WHO緊急時対応基金から145万米ドルが既に拠出されました。
- 国際協力:
- WHOは各国や製薬会社とワクチン寄付の可能性について協議しています。
- 医療対策暫定ネットワークを通じて、ワクチン、治療薬、診断ツールなどへの公平なアクセスを促進しています。
国内の状況
Mpoxは感染症法で4類感染症に位置付けられています。国内では、2022年7月に1例目が報告されて以降、2024年2月25日時点で240例が報告されています。全ての症例が男性であり、そのうち229例(95.4%)は、推定・確定される感染経路として性的接触があったことが報告されています。
診療にあたっては、エムポックス診療の手引き 第2.0版(https://dcc-irs.ncgm.go.jp/topics/mpox/)が参考となります。
最後に
Mpoxの新しい株の出現と急速な拡大に注意を払う必要があります。また日常診療では性感染症としての側面も考慮していく必要があります。
この状況は刻々と変化する可能性があるため、WHOや各国の保健機関からの最新情報を定期的に確認することをお勧めします。
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