いつ血液培養を採取しますか?どのような時に血液培養をフォローしますか?

ジャーナルクラブ

感染症診療において血液培養はとても重要な検査の一つであることは言うまでもありませんね。

血液培養のガイダンス*には、適切なセット数や血液の採取量については記載されていますが、どのような患者で血液培養を採取すべきか具体的な記載はされていません。教科書的には、菌血症や敗血症が疑われる患者で血液培養を採取しましょうと記されています。また入院患者では、指示簿に38℃以上の発熱時には血液培養2セット採取と記していることも多いでしょう。

A Guide to Utilization of the Microbiology Laboratory for Diagnosis of Infectious Diseases: 2018 Update by the Infectious Diseases Society of America and the American Society for Microbiology. Clin Infect Dis 2018;67:813. PMID: 30169655

いつ血液培養を採取するのか、そして血液培養陽性となった場合どのような患者で血液培養のフォローをすべきなのか一つの指針となる論文があります。そのタイトルはスバリ

Does This Patient Need Blood Cultures? A Scoping Review of Indications for Blood Cultures in Adult Nonneutropenic Inpatients.

JAMAのthe clinical rational examinationのタイトルみたいですが、これは2020年のClinical Infectious Diseasesに掲載されたレビューになります。

好中球減少のない成人入院患者を対象とした2893の文献から50の文献を抽出し、レビューを行った上でジョンスホプキンスの多職種チームにてアルゴリズムを作成しています。

早速アルゴリズムを見てみましょう(注:Dr .MONが日本語に意訳しておりますので原本もご確認ください)

★新規イベントにて血液培養採取を考慮する際のアルゴリズム

ポイントは、過去の文献より各疾患別の血液培養陽性率から事前確率を見積もっているところです。発熱や白血球数と菌血症には相関関係がないと言うことからLowにカテゴライズされています。ただしshaking chill (悪寒戦慄)は菌血症の予測因子として優れていると記載されています(オッズ比:4.7, 95%信頼区間:3.0–7.2)

個人的には、当初想定していた感染症フォーカスと実際には違っていたという状況もそれなりに経験するため、検査前確率がLow(<10%)にカテゴライズされる感染症を想起した場合でも血液培養は採取していることが多いです。ATS/IDSA市中肺炎のガイドライン2019*で、市中肺炎では血液培養(喀痰培養も)は推奨も否定もしない(血液培養によりアウトカムを左右するというエビデンスがないため)という記載を見た時と同様、この辺りはすぐに現場に適応するのがためらわれます。

Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America. Am J Respir Crit Care Med 2019;200:e45. PMID:31573350

★菌血症患者において血液培養フォローを考慮する際のアルゴリズム

血液培養のフォローに関しては、比較的リーズナブルな感じがします。

個人的には、S. aureusS. lugdunensis以外に連鎖球菌や腸球菌が分離した際にも血液培養をフォローしていることが多いです(この辺りは個人的な経験が影響していますが・・・)。

これらのアルゴリズムは、これまで報告されてきたエビデンスに基づくものかつ、正しく診断がなされたという前提のものですので、臨床応用するには慎重になる必要があります。ただし、どの疾患で血液培養がより重要かということを客観的に見直すのにはとても良いデータかと思います。あと若手のドクターなどへのティーチングでは使える小ネタになりそうですね。

Does This Patient Need Blood Cultures? A Scoping Review
of Indications for Blood Cultures in Adult Nonneutropenic
Inpatients. Clin Infet Dis 2020; 71:1339. PMID: 31942949

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