中心静脈カテーテル関連感染症の診断に用いるDifferential time to positivity(DTP)は妥当なのか?

ジャーナルクラブ

医療関連感染症で診断が難しい感染症といえば、カテーテル関連血流感染症(Catheter-related blood stream infection: CRBSI “クラブシー”)が挙げられます。カテーテルの刺入部の発赤や腫脹があれば疑えますが、その頻度は3%程度とも言われています。さらに血液培養を採取する以外に診断できないというのも厄介ですよね。

米国感染症学会のCRBSIガイドライン2009では以下の3つの診断基準が挙げられています(日本の施設で3つ目のコロニー定量で判断する施設はほとんどないかと思います)。

  • 少なくとも1セットの末梢静脈から採取した血液培養とカテーテル先端培養から同じ微生物が検出されること。
  •  2つの血液培養検体(1つはカテーテル、 もう1つは末梢静脈から採取)で、血液培養陽性化までの時間差 [DTP:differential time positivity])がカテーテルから採取した血液培養の方が2時間以上早く陽性となること。
  • カテーテルより採取した血液培養から検出される微生物のコロニー数が、末梢から採取された血液培養のコロニー数の3倍以上となること。

この中で2番目のDTPが2時間以上というのは妥当なのでしょうか?

実は私も知りませんでしたが、この根拠に関してはそのほとんどは小規模な研究で、レビューに関してもいくつかの問題があったようです。

2005年に一度レビューが行われていますが、その後もいくつかの報告があることから、今回新たにCRBSI(今回は中心静脈カテーテル感染: Central line-associated blood stream infection: CLBSI)におけるDTPのシステマティックレビューとメタアナリシスが実施されました。

Utility of Differential Time to Positivity in Diagnosing Central Line–Associated Bloodstream Infections: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Infect Dis. 2023;77(3):428–37. PMID: 37062596

この論文は、

274の候補論文から、条件を満たした28の研究のシステマテックレビューと、23の研究のメタアナリシスを行っています。

結果は、

DTPの

感度は81.3%(95%信頼区間[CI]:72.8%-87.7%)

特異度は91.8%(95%CI:84.5%-95.8%)

陽性尤度比は9.89(95%CI:5.14-19.00)

陰性尤度比は0.20(95%CI:0.14-0.30)

となっています

ただし、黄色ブドウ球菌(感度は低いが特異度は高い)やカンジダ(感度は高いが特異度は低い)が原因微生物の場合では精度が悪く、臨床的な判断を優先する必要があります。

つまり、DTPはCLBSIの診断に有用ですが、分離菌が黄色ブドウ球菌やカンジダでは解釈に注意が必要ということになります。

これで今日からCLBSIにおける診断で、末梢からの血液培養とカテーテルからの血液培養が陽性になった時の時間差が2時間以上早くカテーテルからの血液培養が陽性になった時に自信を持ってCLBSIと診断できますね。ただし分離菌が黄色ブドウ球菌とカンジダの時には要注意です。

Utility of Differential Time to Positivity in Diagnosing Central Line–Associated Bloodstream Infections: A Systematic Review and Meta-Analysis. Clin Infect Dis. 2023;77(3):428–37. PMID: 37062596

Meta-analysis: methods for diagnosing intravascular device-related bloodstream infection. Ann Intern Med . 2005;142:451-66. PMID: 15767623

コメント

タイトルとURLをコピーしました