感染性心内膜炎は、診断・治療ともにとても難しい感染症の一つですね。特に感染臓器が心内膜であるために病初期は非特異的な症状しか出ませんが、進行すると全身多臓器におよぶため、どのタイミングでどの診療科を受診するかによっても診断精度が変わってきます。
感染性心内膜炎イメージ図
診断基準はあまりにも有名すぎるDuke criteria。ご存知の方も多いかと思いますが、それが今年改訂されました。その名もDuke-ISCVID(日本語でなんと呼ぶのでしょう・・・デューク イスクビッド クライテリア?)。
The 2023 Duke-International Society for Cardiovascular Infectious Diseases Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Criteria. Clin Infet Dis 2023;77:518-26. PMID: 37138445
画像診断にCardiac CTやPET-CTが入ったり、メタゲノム解析など新しい微生物検査が加わりました。また個人的には典型的な原因微生物が増えて具体的に明記されているところが理解しやすくなっているかなと思います。
- Definite endocariditis
- 病理基準
- 臨床基準
- 2つの大基準
- 1つの大基準と3つの小基準
- 5つの小基準
- Possible endocarditis
- 1つの大基準と1つの小基準
- 3つの小基準
- Rejected endocarditis
- 症状や所見を説明する代替診断あり
- 4日間未満の抗菌薬治療で再発なし
- 4日間未満の抗菌薬で手術または剖検にて心内膜炎の病理や肉眼的所見なし
- 上記のpossible endocarditisの基準を満たさない。
病理学的基準 Pathologic criteria
◼️臨床的に活動性の心内膜炎があり、疣腫、心臓組織、摘出された人工弁や縫合リング、上行大動脈グラフト、心血管植込み型電子デバイス(CIED)、動脈塞栓物より微生物がPCRやアンプリコン/メタゲノムシーケンスもしくは、in situ hybridizationにより同定される。
もしくは
◼️疣腫や心臓組織、人工弁や縫合リング、上行大動脈グラフト、心血管植込み型電子デバイス(CIED)、動脈塞栓物から活動性の心内膜炎所見を認める
臨床的基準 Clinical criteria
大基準 Major Criteria
血液 培養 | 異なったタイミングと部位から採取された2セット以上の血液培養で典型的な微生物が分離、もしくは3セット以上から非典型的な微生物が分離される |
典型的な微生物 Staphylococcus aureus; Staphylococcus lugdunensis; Enterococcus faecalis; all streptococcal species (except for S. pneumoniae and S. pyogenes), Granulicatella and Abiotrophia spp., Gemella spp., HACEK group microorganisms (Haemophilus species, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Cardiobacterium hominis, Eikenella corrodens, and Kingella kingae). 人工物がある場合は下記も典型的な微生物 Coagulase negative staphylococci, Corynebacterium striatum and C. jeikeium, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, Cutibacterium acnes, non-tuberculous mycobacteria (especially M. chimaerae), and Candida sp | |
他の微生物 血液中のCoxella burnetii, Bartonella sp, Tropheryma whippleiがPCRもしくはアンプリコン/メタゲノムシーケンスにて同定される。 もしくは Bartonella henselae or B. quintanaのIgG抗体が1:800以上 | |
画像 検査 | 心臓超音波もしくはCardiacCTにて、疣腫、弁/弁尖穿孔、弁/弁尖瘤、膿瘍、偽動脈瘤 心臓内瘻孔 もしくは 新規の弁逆流、既知の逆流の増悪、人工弁の新規部分脱落 |
[18F]FDG PET/CTにて、自然弁もしくは人工弁、上行大動脈グラフト、心臓内デバイスのリード、他の人工物に異常な代謝活性を認める | |
手術 | 大基準の画像検査や微生物検査を満たさなかったとしても心臓手術中に感染性心内膜炎を示唆する術中所見を認める |
小基準 Minor criteria
素因 | 過去のIE歴、過去の弁置換術歴、先天性心疾患、mild以上の逆流や狭窄、心血管植込み型電子デバイス(CIED)、肥大型閉塞性心筋症、iv drug使用者 |
発熱 | 38℃以上の発熱 |
血管 現象 | 画像検査にて、動脈塞栓、敗血症性肺塞栓、脳膿瘍、脾膿瘍、感染性動脈瘤、脳出血、眼瞼結膜出血、Janeway lesions、紫斑 |
免疫 現象 | リウマチ因子陽性、オスラー結節、Roth斑、免疫複合体性糸球体腎炎 |
微生物 | 血液培養から大基準に含まれない微生物の分離 もしくは 心臓の組織、心臓の人工物、塞栓以外の無菌検体から培養もしくは、PCR、核酸ベースの検査にて感染性心内膜炎に矛盾しない微生物の分離 |
画像 検査 | 人工弁、上行大動脈グラフト、心臓内デバイス、その他の人工物挿入後3ヶ月以内に[18F]FRG PET/CTにて異常な代謝活性を認める |
身体 所見 | 聴診上、新規弁逆流を聴取(心臓超音波が実施できない時) |
The 2023 Duke-International Society for Cardiovascular Infectious Diseases Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Criteria. Clin Infet Dis 2023;77:518-26. PMID: 37138445
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