皮膚軟部組織感染症は、原因は多岐に渡りますが、水曝露後に発生することがあり、適切な評価と管理が重要です。この記事では、曝露後の軟部組織感染症の主要な側面について概説します。
水といってもさまざまなものがあります。
- 淡水(池や湖)
- 流れる淡水(川や大きな湖)
- 汽水(海水と淡水が混じる場所)
- 海水
- 管理されたプールや温泉
水への曝露に関するものは、外傷、釣り針、魚の棘による刺し傷、咬傷などがある。ときに免疫不全者の刺身の摂取などもあります(例:肝硬変患者のVibrio vulnificus感染症など)
代表駅な微生物とその特徴について下記に示します。
原因微生物 | 概要 | 潜伏期間 | 臨床的特徴 | 治療 |
Aeromonas hydrophilia | 淡水や汽水(淡水と海水が混ざり合った水)、温暖な季節、溺れる | 24-48時間 | 蜂窩織炎、膿皮症、壊死性筋膜炎 | 第3,4世代セファロスポリン、キノロン、アミノグリコシド |
Vibrio vulnificus | 海水(温暖)、刺し傷、牡蠣、肝疾患のある男性 | 3-7日 | 蜂窩織炎、出血性水疱、潰瘍、壊死性筋膜炎 | 第3世代セファロスポリン、ドキシサイクリン、キノロン |
Edwardsiella tarda | 淡水や汽水(淡水と解すが混ざり合った水)、ナマズの背中やヒレにある棘に刺される、肝疾患のある人 | 24-48時間 | 膿皮症、壊死性筋膜炎、筋壊死 | グラム陰性桿菌をカバーする抗菌薬がほとんど感性 |
Erysipelothrix rhusiopathiae | 海水、魚を捌く時の怪我 | 24-48時間 | 丹毒 | ペニシリン系、セファロスポリン系、キノロン、ダプトマイシン、クリンダマイシン |
Mycobacterium marinum | 海水、水槽、カニ、ウニ | 1 週間から1ヶ月(平均21日) | リンパ節炎、結節性潰瘍、sporotrichoid spread、免疫不全患者では深部感染症、低温で発育するため手足など末梢の病変が多い | クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピン、ST合剤(2剤以上で治療) |
Mycobacterium fortuitum | 淡水と海水、温泉、ペディキュア、フィッシュセラピー | 3-12週間 | 感受性試験による、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、ドキシサイクリン、ST合剤、アミカシンに感性であることが多い | |
Shewanella spp. | 海水、貝(特にはまぐりやアサリ)の生食、溺水、 | 4-24週間 | 蜂窩織炎、膿皮症、深い潰瘍、壊死性筋膜炎 | 第3,4世代セファロスポリン、キノロン、アミノグリコシド |
Pseudomonas aeruginos | 淡水 | 8-48時間 | 皮膚軟部組織感染症、眼感染症、耳感染症など多彩 |
水曝露による皮膚軟部組織感染症でのempiric therapyとしては(壊死性筋膜炎を除く)、
セファゾリン+レボフロキサシン+(海水曝露があれば)ドキシサイクリン
さらに土壌や下水の暴露があれば嫌気性菌カバーにてメトロニダゾールを追加します。
Soft tissue infection following water exposure. UpToDate (Oct 13, 2023)
コメント